2017.02.25

昔ながらの「カメ仕込み」にこだわり生まれた焼酎は口当たりがまろやかで、芳香で風味豊かな持ち味が特徴

当蔵の創業は、文政六年（1823）。
初代の深野時次（ときじ）は元々福岡・久留米の出身。久留米ですから、当時の領主は筑前・黒田氏でしょうか、御用商人をしていたそうです。時次はお米の買い付けに人吉・球磨(当時の相良藩)に出入りするうち、人吉盆地の豊富な米、良質な水、冬の冷涼な気候に目をつけ、当時相良藩が藩をあげて焼酎・清酒の製造を奨励していたこともあり、一族でこの地に移ってきたのだそうです。

現当主・深野誠一は数えて七代目。
おかげ様で2017年には、創業194周年を迎えました。
 

■量産より良産を
深野酒造の裏には、400年前にはすで有ったと言う人工の御溝があります。相良藩の下屋敷まで全長7キロ弱、姫梅花藻の白い花が咲くのは7月頃から8月にかけてで、水面に白い花が揺れます。
 

伝統を繋ぐのは「人」であり「物」でもあります。時代によって少しずつ味を変え今に融合しながら育まれ、繋がれます。

150年ほど前に手造りで造られた土カメが並ぶ完全手造りの蔵では、仕込みの時期になると様々な「蔵の音」があります。米を蒸す蒸気の音、麹室からカメに移される麹米を運ぶ音、まるで雨が降っているような心地良い発酵の音、蒸留の音、瓶詰めの音。杜氏は音の微妙な違いを聞き分け、静かに的確に工程をこなしていきます。その背中は、語りかけることも拒否するような緊張感とオーラを醸し出します。いつの時代も「頑固さ」から良き商品が生まれてくる事を感じさせます。

蔵を開放し見学も試飲もできます。カメで10年寝かせた「蔵の秘蔵酒」さえ試飲可能です。拘るのは「造り」だけではなく、一人一人のお客様をおもてなしする「心」でもあります。