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蔵人レポート Report

2020.06.13

酒は濁れど想いは一点のにごりなし

1.麗しき酒の母なる水、そのかがよいと城下町の風情に酔いしれる「大垣」

 酒蔵周辺風景 たらい舟

酒蔵周辺風景 大垣城

酒蔵周辺風景 大垣祭

滋賀県から岐阜県へ入ると、深い山懐はしだいに濃い緑を帯びていきます。大垣市はそんな風土の中に開けた、美しい街並みの城下町です。
そして、県境に聳える伊吹山からは「伊吹おろし」と呼ばれる西風が吹き、春と秋は穏やかな気候に恵まれます。しかし、夏場は盆地特有の高温多湿、日中は25~30度以上となり、時として40度近くになることもあります。

また雨はもっぱら多く、そのため長良川、揖斐川などの一級河川を含め15本もの河川を従えています。

町のそこかしこには、これらの川の伏流水から湧く泉があり、大垣は古くから「名水の都」の名で親しまれてきました。
満々と水を自噴する井戸や池は澄みわたり、思わずノドを潤してみたくもなります。
こう聞けば、三輪酒造が、清冽な天然水の恩恵に与る蔵元であることを容易に想像できるでしょう。
大垣市のシンボルと言えば、日本の歴史に名を刻む「大垣城」でしょう。重厚な白壁の櫓や城郭が建てられたのは、明応9年(1500)とも天文4年(1535)とも言われます。

この地は西美濃の要所であったことから、天文13年(1544)織田信秀が入城して以来、豊臣秀吉が小田原北条氏を征伐し、天下を統一した天正18年(1590)までに、氏家直元、池田恒興、羽柴秀勝(豊臣秀吉の養子)などの8氏がめまぐるしく交代しました。
その凛然とした姿が歴史の表舞台に登場するのは、慶長5年(1600)。この町からほど近い、関ヶ原合戦でのことでした。

西軍の総大将・石田三成は、ここ大垣城に本拠を構えて徳川家康を迎え打たんとし、その名が天下に知れわたったのです。

江戸時代に入ると戸田10万石の居城となり、以来、戸田大垣藩は西美濃に君臨。明治の藩籍奉還までの230余年を、太平の世とともに歩んだのでした。
その大垣城を抱え込むように外堀水門川が流れ、その水面には錦鯉が群遊しています。鯉たちの艶やかな色彩も、実は、大垣の良質の水が際立たせているそうです。

近年は、水圧の後退によって、町をめぐる大半の湧水はポンプアップされる時代となってしまいましたが、それでも「加賀野八幡神社の井戸」だけは、今なお清らかな地下水を滔々と流出し、県の名水にも選定され、大垣を訪れる人々を惹きつけてやみません。

 

2.三輪酒造(澤田屋本家)の歴史

 酒蔵外観

 酒蔵外観

三輪酒造は、初代三輪徳次郎が天保8年(1837)に「澤田屋」の名で大垣の地にて造り酒屋として創業しました。「澤田屋」の酒の評判は上々でかつての戸田藩御用達の酒造蔵として繁栄しましたが、その永い歴史の中で数々の試練に出会います。

明治11年(1878)、大垣の6大騒動に数えられる「澤田屋火事」を出し、酒蔵を焼き尽くす大惨事が起こりました。これを機に火消し「大文字組」を組織し、以来「代々、消防に奉仕せよ」との家訓が言い伝えられています。

当主が三代目となった明治25年(1892)、大垣市を壊滅させる「濃尾大地震」が発生します。再建した蔵は瓦礫の山と変わり果て、酒樽はひっくり返り、造っていた酒のすべてを失ってしまいました。

その痛手からようやく立ち直りかけた矢先の、明治29年(1896)。今度は大洪水が押し寄せ、「澤田屋」は半死半生の状況へと追い込まれます。けれど「澤田屋」はこのときも立ち上がります。

いつどんな時も美味い酒を造りを続け、愛されつづけたことが、暖簾を守り抜いた何よりの理由です。
 

 三輪酒造 店舗外観

三輪酒造 店舗外観 

 三輪酒造 春の蔵開き

三輪酒造 集合写真

 

3.世界遺産 白川郷と三輪酒造のご縁

『白川郷』でおなじみ岐阜県の山間地にある大野郡白川村は、ユネスコ世界遺産委員会により「世界文化遺産」として登録された合掌造りの里として知られています。何百年という歳月を経て、村人たちの共同労働を意味する「結(ゆい)」の絆によって守り続けられてきた合掌造りは、今も日本人の心を懐かしさいっぱいにさせる故郷の風景を醸し出しており、訪れる人をやさしい温もりで迎えてくれます。 そして毎年9月の終わりから10月にかけて、五穀豊穰、家内安全、里の平和を山の神様に祈願すべく村内の各地区の神社で行われるのが、天下の奇祭「どぶろく祭」です。各神社にはいわゆる酒蔵があり古くより受け継がれた独特の技法を もって毎年どぶろくが造られ振る舞われています。「神酒どぶろく」を飲みながら村人と遠来の客が収穫に感謝する風情は、まさに日本の故郷の祭といえます。 その白川郷とは昭和49年、三輪酒造六代目が白川村の関係者より、一年中呑んでもらうことが出来てしかも販売することが可能な「どぶろく」の製造を依頼され、白川郷のどぶろくに近いにごり酒を誕生させたのがこのご縁の始まりです。

 白川郷 どぶろく祭

 白川郷 冬景色

白川郷 夜

 

4.三輪酒造 酒造り

仕込み風景

 仕込み風景

仕込みタンク

 

5.三輪酒造の現在そして未来

現在では1500石を超える石数の酒を世に送り出していますが、日本国内にとどまらず、アメリカやヨーロッパ、オセアニア、アジアと、世界各国に向けて日本のにごり酒文化を伝えるべく酒造りに努めております。その造りの90%以上が実はにごり酒の商品という、にごり酒に特化した蔵元です。他蔵元様のにごり酒とは異なる独自の製法により、非常に濃厚で米の旨味が詰まったにごり酒を醸しており、その他、薄にごり酒やにごり酒の上澄み、さらに冷凍やチルド、発泡にごり、そして永年の想いを実現したどぶろくと、徹底したにごりへのこだわりにより、白川郷という銘柄を支えております。これまで15年、特に濁酒に特化してきた甲斐もありお客様に白川郷のにごり酒が確かに定着しつつありますので、さらにそのこだわりをにごり酒に込めてお客様に発信していきたいと思います。夢は日本中、世界中ににごり酒の文化を今以上に広めて楽しんでいただくことです。
また、にごり酒に特化した蔵元ですが、地元主体にしっかりと清酒も醸しております。少量生産ですがこだわって醸した自慢の酒質のものであり、地元大垣の地酒を岐阜県外の方々にも広く知って頂きたいと願っております。

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